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フリーウンカーの哲

 今、いちばんビジネスクラスで話しかけられている博士、ウサギヶ原博士に東京ドームまで呼びだされた負けじと一流の博士たちが席にすわると、マクドナルドのポテトLサイズが配られた。あらかじめ、ウサギヶ原に賛成派はライトスタンド、反対派はレフトスタンドにわかれて座っていた2000人の博士たちは、小腹がすいていたこともあり、微笑んだ。
 まさかこんな行き届いたサービスがあるとは。こんなの初めて。反対派の博士たちの何百人かは、少しその場で食べたあと、ポテトをもってライトスタンドの賛成派に移動し、その数はほぼ同数になった。
「電気けすよー」
 とつぜんアナウンスがひびきわたり、問答無用でドーム内が暗くなった。博士たちは最初ざわっとしたがやがて落ち着き、スタンドはすっかり、ポテトをまさぐるガサガサ音、クチャクチャ音でいっぱいになった。
「つけるよー」
 ふたたび明るくなると、セカンドベースのあたりに本日の主役、こんなところに呼び出した張本人、ウサギヶ原博士が確認できた。
「えー、みんな」
 と言ってネクタイをゆるめ、ウサギの耳を装着するウサギヶ原博士。


哲_001




「今日は集まってくれて、ほんとありがとう。さっそく、さかのぼらせていただこうかな……話は2週間前にさかのぼります。その日、わたし、ウサギヶ原はマンションの駐輪場にて、自転車をぬれぞうきんでふいていました。赤い自転車です。そしたら、口座に、国から30億円が振り込まれていました。とてもじゃないけど使いきれないそう思ったとき、あたまに浮かんだのは、みんなのヒゲづら。少しでもみんなに還元できたらと思って、ここ、東京ドームで、マクドナルドのポテト食べながら、あーだこーだ言いながら、学会を行うことにしました」
「コラ研究しろー!」「もらったお金はぜーんぶ研究に使えー!」「ちゃんとぜーんぶだ!」「だれがヒゲづらだー」「ふざけた格好をするんじゃないったらー」
 反対派のレフトスタンドから怒声が飛んだ。それでも、落ち着きはらっているウサギヶ原博士。マイクをかまえる。
「たまにはぜいたくもいいでしょ」
「よくないだろ常識的に考えてー!」「研究したくても、できない博士もいるんだぞー!」「いくらかかったか、きちんきちんと報告しろー!」
 このままだと言われっぱなしだ。今度は賛成派、ライトスタンドから反撃の声がとんだ。
「もらった金をどう使おうと、もらった人の勝手だろー!」「だいたいお前らもポテト食べただろー!」「国のお金でポテト食べてんじゃないよー」「おいしかったんだろー! ポテトを見せてみろー!」
 レフトスタンドの数人が赤い箱をほこらしげに突き上げて無傷のポテトを見せたが、他の博士たちは腕組みをして、首をかしげ、手でポテトにふたをしながら、もう一方の手でひげをさわさわした。一流の博士ともなると、ひげは全員生えている。


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「それ見たことか、言わんこっちゃないよー!」「やーい、食いしん坊!」
 みにくい争いになってきたところで、ウサギヶ原博士が口をひらいた。
「まあまあまあ、いいよいいよ。別にみんな食べてくれていいよ。ばくばく食べて、ぶちぶち文句言っても、いい。ポテトが出てきたら食べちゃう気持ち、ある。文句を言いたい気持ちと、ポテトを食べたい気持ち、どっちも、あるよ。50・50じゃなくて、それぞれに100あるよ。たとえ絶交しても、もらったマックカードをしまっておくなんてできない。それと同じことだよ」
 賛成派は、ウサギヶ原博士の後ろ盾のもと、もっともっとずっと一晩中、この席で悪口が言いたい深夜のファミレス気分だったので、なんだか拍子抜け、ひげをいじって心を落ち着けることにした。事実、落ち着いてきた。
「さて、そんな話はともかく、さっそく、わたしの研究を発表してもいいかな」
「さっさと言え-!」反対派の中でも、もうなんでもかんでも怒るぞというスタンスをとっている、4匹のサルをキーのささった車内にとじこめたときに車が発進する確率について研究している博士が野次を飛ばした。
 ウサギヶ原博士は聞こえているのか、いないのか、装着しているウサギ耳を前方に折って、ためてたてめて、ぴょこんと立ててメッチャのん気くんという様子である。
「わたしの研究は、『ウンチをがまんするからギスギスすることに関する7つの研究』です!」
「バ、バカヤロー!」
 その瞬間、レフトスタンドから、ポテトが一本ずつ投げ込まれた。ポテトは外野の人工芝の上に落ちて「バカ」という文字を形作り、次々投げこまれるネクスト・ポテトが、その文字をくっきりはっきり、させていくばかりだった。


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 あきれた研究内容に、さすがの賛成派からも何本かポテトが投げこまれ、言うにことかいてウンチ、もうつきあってられないよという顔をした800人ほどの博士が反対派へとポテトをもって大移動した。
 賛成派のほうはかなりさびしくなってしまい、今よりさらに何かもう一歩、踏みこんだ特典、マックカードなどがあるのではないかと見越して賛成派から動かない博士たちも、のけぞって振り向いて、
「おいポテトおいてけよー!」
 と言うのが精一杯だった。
「さっきポテトを食べたい気持ちもあるって言ってただろ! なんで置いてかなきゃいけないんだよ! おかしいだろ!」
 反対派になったとたんに口が悪くなる博士たち。みんな立派で、意地やプライドもそれぞれあると思うけど、こんなにピリピリしてしまって、せっかく平日に東京ドームを貸し切って集まったのに、学会はどうなってしまうのだろうか。
 しかし、当の本人はいたって冷静だった。ぜーんぜん気にしてないみたいだった。ポテトがいっぱい投げこまれて、どんなふうに見えているのだろうか。鼻だけヒクヒク動いているけど、においはするのだろうか。
「発表をつづけます。わたしは、民放の動物バラエティを見る研究、ヒマだからペットショップにいりびたる研究、かわいい赤ちゃんをYouTubeで選り好みする研究、てんとう虫コミックスをお風呂で読む研究などなどを通じて、新発見の可能性にいたりました」
「都合のいいこと言って、遊んでるだけだろー!」「おまえも研究者のはしくれなら、志村どうぶつ園ばかり見てないでディスカバリーチャンネルをみろー!」「ネイチャーを読めネイチャーをー!」「何のマンガを読んでいるんだー!」
「本を読むばかりが、勉強じゃないだろ!」「だいたい、志村どうぶつ園とは、かぎらないんだよなー!」「なに読んでたっていいじゃねえか、教えてたまるかよー!」「俺はネイチャーに載ったことあるぞー、どうだまいったかー」
 両陣営から罵声が飛び、もうああ言えばこう言う状態で、ポテトもよく飛んだ。博士たちはくたくたしたポテトの方を好む傾向にあるらしく、ハリのあるポテトばかり投げられており、人工芝の上の「バカ」はHGゴシックに尖りゆくばかりである。 
「つづけます。わたしは、動物、虫、赤ちゃん、てんとう虫コミックスのやつらなど、いつでもどこでも、すぐにうんちをしてしまうやつらはかなり心が広いということに気づいたのです」
「ファールボールにご注意ください」という音声が手違いで流れたが、誰も気にしなかった。そんなことあらかじめ言われなかったのに、耳の穴をかっぽじってウサギヶ原博士の話を聞いていた。
「昨日けっこうおそく寝たのに早起きできた、そんな奇跡の朝が誰しもあるはず。そんな時ゃ、ラフな格好で、というかパーカーで、牧場に行ってみてください。そして、馬の目を見てください。すごくやさしい、ぬれた目をしていることを確認して、魅せられて、それで、大あわてで、後ろにまわりこんでください……してませんか?」
 一拍ためてのち、だめ押すウサギヶ原。
「…うんち、してませんか?」
「してるぞーーー!!」「してるしてるーー!!」
 立ち上がって盛り上がる賛成派。反対派はちゅぱちゅぱと塩のついた指をしゃっぷりあげ、空の箱を人工芝に投げこむことで荒ぶる気持ちを表現した。
 さらに、ウサギヶ原博士はたたみかける。
「わかってきたようだね。ここで、わたしの説を科学的に証明するために、一人の少年をおまねきしたいと思います」
 すると、オーロラビジョンに「FREE UNKO!!」という文字がおどり始めた。上下左右によく動く文字に、がぜん盛り上がる。
 リリーフカーがぴゅっと飛び出してきて、猛スピードで博士のところまでやってくると少し行きすぎて、曲がりながらバックしてとまった。
「リリーフカーってバックもできるんだなあ」「はじめてみたよ」「意外とやるもんだね」
 賛成派は余裕しゃくしゃく、手を上げてポテトのおかわりを要求する始末であった。
 リリーフカーからは小さな少年が出てきた。巨人のキャップをかぶっている。グローブをはめて、きょとんとした顔がオーロラビジョンに「ど」アップにされた。鼻くそが見える。


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「聞いておどろかないでください。彼は、生まれてから一度もウンチをガマンしたことがありません。元気にたれながしております。もちろん、おならもです」
 どよめきにつつまれる東京ドーム。そんなの初めて見た。博士が手をたたくと、少年がくるりとまわった。ズボンのおしりの所だけくりぬかれて、丸見えになっていた。
「30億円は、彼を育てるために国から支給されたものです。わたしは、30億円を使いまくり、ひとときも、ウンチをガマンさせることなくのびのび彼を育て上げて、ウンチをガマンしなければオールオッケー、すがすがしい、気持ちの良い、快い人間になれることを証明したいと思います。かなり、いいところまできています」
 ここではるばる金沢からやってきた女性の博士が手を上げた。みんなのように声を荒げて叫ぶことを良しとしない彼女に、マイクが手渡された。
「こんにちは、日頃はキリンの首にコアラをすみつかせる研究をしております、金沢ダイソーの名刺入れ大学つや消しシルバー学部教授のアニマル梯団よしえと申します。キリンの首が傷だらけになっております。すみませんが、少年に一つだけ質問してもよろしいでしょうか?」


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「かまいませんとも」とウサギヶ原博士。
「ぼく、寒くないの?」とよしえ。
 少年は何も言わなかった。少しだけ首をかしげたような気がした。オーロラビジョンが消されて表情がわからないこともあり、反対派は怒鳴り声を上げた。
「おいおい、なんかしゃべれー!」「人が、質問してるだろ! お人形さんじゃないんだから!」「おらークソしてみろ!」「たれながして、お前を証明しやがれー!」「屁ぇこけー!」
 おかわり可能であることを知るやいなや、余裕をもってばんばん投げられ始めたポテトで「バカ」の字がみるみる太字になっていく中、少年が、差し出されたマイクに口を近づけて、言った。
「ギスギスしないでよ、やだなあ」
「そうだね、ギスギスしたね、いやだね」と横にいる博士が頭をなでた。
 満足げな少年の顔がビジョンに映し出された。
「ぼく別にいいけどね。あと、うんちやおならはしたい時にします」
 反対側がぐうの音も出ねえ状態で静まりかえる中、パチパチパチパチ……よしえ博士が、指を反りかえらせた女らしい拍手をしながら、斜めを向いて少年を見下ろしていた。
「わたくし、感動いたしました。もしも、彼が苦しみ、血ヘド吐きまくりで、鼻くそを今よりもっとフルにためながら実験台になっているとしたら、わたくしは、リーガル・ハイも見てたし、即刻、ウサギヶ原博士を訴えようと決めていました。でも、彼の顔、声、適度な鼻くそを見て確信しました。今の生活に心から満足して、野球の帽子も買ってもらったのかな? とにかく、すっごくいい感じ。それもこれも、うんちをガマンしないおかげなんだと思うと、わたしの研究室で、キリンの首にしがみついてるコアラたちの顔が否応なく浮かんできました。好きなだけ食って、好きなだけウンチをして、キリンの背中が汚れ放題に汚れてる。それでキリンは怒るでしょうか? いいえ、草食ってます。これぞ、リアル・生き物の姿です。本当の姿にもどれたら、ギスギスしないのは当たり前です。わたくしは、賛成派に移ります。そして、只今をもって、ハッピーハッピーに改名します!」
 形勢が逆転した。アニマル梯団よしえ、あらため、ハッピーハッピー博士についていく形で1800近くの博士が大移動を始め、賛成派のライトスタンドがいっぱいになった。博士たちのウェーブも始まり、盛り上がりは最高潮である。
 反対派の席では、ただ1人、あのサルが自動車を発進させる確率を研究している博士がプルプルふるえて、時折、ポテトを投げて「自分らしさ」という文字列をフェンスぎりぎりにつくろうとしていた。
 この博士、研究資金をどこからも出してもらえないどころか、昨日、大学からも、サルの実験は自分の、お前の、あの軽自動車を使うように言われ、従わないばかりは懲戒免職にする、ふざけているんじゃない、と戒告されていた。
 もし30億円もらえたら、大型バスを2台買って、向かい合わせにして、サルを100匹ずつとじこめられるのに……! そしたら、どんなに楽しいだろう……! おれは車にサルをとじこめて、それを研究室の窓から見てる時がいちばん幸せなのに……!
「クラクション鳴るとめちゃテンションあがる……」
 貸し切り状態になったマイクをつかみ、つぶやいた博士。
「なんだって?」「クラクションがなんだって?」
「……お前ら、クソをガマンしなければ、いいヤツだって言うんだな!?」
「そう言ってんだろー」「そんなギスギスするなよー」「ケンカかー」
「ケンカだよ!!」
「おーこわ」
「ちょっと、反対派のあなた、そんなギスギスしないで、座ってください。ところで、お名前は…?」ウサギヶ原博士が聞いた。
「モンキー・D・見ルフィ」


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「えー、モンキー博士、すこしばかり落ち着いて」
「落ち着けないよ。これが落ち着いていられるか。こんなおれでも、クソをガマンしないでたれながしたら、ギスギスしないですむのか?」
「そうですよ。今すぐにでも、この少年のように、気持ちのいい人間になれます。ウンチなんかガマンするから、つまらない人間になるんです。そういう研究結果が出てます。もっと赤ちゃんを見習って生きていきましょう」
「なら、ここでもう一つ、実験してもらおう」
「ありがたいですね。なんでもどうぞ」
「なんでもどうぞだぞー、バカヤロー」「そっちから持ちかけるとは、いい度胸じゃないかー」「どんな実験なんだー言ってみろー」「怒らないから言ってみろー」
 ハンバーガーの袋をガサガサさせて、ナゲット類もつまみながら、完全に食う体勢になった賛成派はレフトスタンドの方を見ないで好き勝手言っていた。
 モンキー・D・見ルフィ博士は、はき捨てるように言った。
「そこの坊主から渡哲也に電話させろ」
「渡さんに!?」「渡さんって、あの渡さんか!?」
 ライトスタンドがにわかにざわめいた。少し考える間があったあと、2000人でつばをのみこむ音が、実りある研究発表を記録しようと作動していたレコーダーに、自然な音で記録された。
「そう、あの渡さんだ。お前たちの考察では、渡さんもまた、クソをガマンしない、気持ちのいい、ギスギスしない人間ということになるのでは?」
「渡さんにはかわいそうだけど、当り前だろうがー!」「渡さんがギスギスするはずないだろー!」「大御所に失礼なやつだなー!」「えらそうに言いやがってー!」
「無論、君の言うとおり、渡さんは気持ちのいい人間だ」
 ウサギヶ原博士は自信満々の感じで答えた。しかし、その額から汗が一筋たれるのを、横にいたおケツ丸出しの少年だけが見ていた。少年はそれを心から心配した。
「しかしだ。渡さんは、今、ドラマ撮影中にちがいない。よって、今、実験をするのは不可能だ」
「ドラマの撮影をジャマしても、ギスギスしないんだろ!?」
「渡さんがギスギスしていなくても、現場はギスギスしている。監督やディレクター、プロデューサー、燃えているAD、わがままな女優、などがいるからだ。ドラマは渡さん一人でつくってるんじゃない」
「お前の研究資金はなんのためにあるんだ。金があまってるんだろ! 何千万でも流しこんで、ごねてごねて、渡哲也を電話口に出させろ! 人類の未来にかかわる大実験だ!」
「それは……」
「今から即、電話をかけて、そこのおしり丸出しの坊主と、渡哲也が、ケンカせず、気もつかわず、おべっかも言わず、仲よく、ほがらかに、対等に盛り上がったら、信じてやろう。そうじゃなきゃ、納得できないぜ」
「いいだろう……」
 ウサギヶ原博士はうめくように言った。
「小林くん、渡哲也に電話するんだ」
「……はい」
 小林と呼ばれた少年がうなずき、東京ドームは水を打ったように静まりかえった。
 しかし、ふしぎなことに、今になって、心は一つになっていた。色々あったけど、みな科学に身を捧げた一流の博士たちである。賛成も反対もなく、一研究者として結果を見届けたい。撮影を邪魔された渡哲也が怒るのか怒らないのか、どうしても真実を知りたい……。
 研究者冥利に尽きる、張りつめた糸にみがきあげた刃を近づけていくようなこの瞬間。
 少年がスマートフォンを手にする。今、受話器の向こうでは、撮影を中断されて怒っている渡と、怒っていない渡が、1:1で重なり合っている状態である。
 結果は観測するまでわからないが、現時点で1つだけ、わかっていることがある。この博士たち、絶対にゴミを片づけないで帰る。
「さあ、実験だ」
 ブッ。一発の屁音ととも、コール音が鳴り響き始めた。


哲9




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絵 ポテチ光秀
文 のりしろ
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絵も文章もサイコー GOOD GOOD イリュージョン ですね

人生観変わりました

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